Namimamo

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「ねえ見て、綺麗」

どこまでも美しく広がるオレンジの夕焼けに、彼女は目を細めて言った。

「あの日の景色を覚えている?大学時代、今日みたいに暑い日だった。あなたが」

「ああ、もちろん覚えているよ」

彼女の言葉を遮って僕は答えた。

それは僕が彼女に告白をして、OKをもらった日だ。忘れるはずもない。

彼女がぱあっと顔を輝かせて微笑む。

「やっぱり覚えてたのね!あなたがバイト代が入ったばかりの財布を落として泣いていた日の空も、こんな夕焼けだったよね」

「えっ」

「それからあなたが単位を落として留年しかけた時に、先生に土下座してくるって走って行った日もこんな風に綺麗なオレンジ色だった」

「えっ」

「焼肉に行って食べ過ぎてコンビニのトイレに駆け込んだあの日も」

「ちょっと待って」


彼女による僕のエピソード披露はこの後更に五つ続いた。

彼女の中で美しい夕焼け空は、僕の情けない姿と共にあるらしい。

これはこれで、愛されているのだと思う。

7/8/2025, 10:50:30 AM