永遠なんて、ないけれど
変わらないものなんてない。
人間だってそう。日々細胞は入れ替わり、身長は伸び、骨は強く、脆くなっていく。嗜好は変わり、思想も変化する。十年も経てば、十年前の人間とは違う人間になっているらしい。なのに普遍的な日々を積み重ね、自分は産まれた瞬間から変わらない人間だと錯覚している。
ーーじゃあ、俺にも新しい名前を付けなくちゃね。
十年前は自分を女の子だと思っていた。周りと違うところがあっても、大人になれば自然と、みんなと同じになれると思ってた。
産まれた時に与えられた名前を捨てたい。だけれど捨てられない。私は俺で、俺は私だ。
「美園ーーうみです」
地元を出、ひとりで暮らし始めた九州のとある田舎町で。私に好意を寄せてくれているという男の人に、知人を介して知り合った。
「は、初めまして……!」
彼は目に見えて分かりやすくどぎまぎしている。
今目の前で私がウィッグを外したらどんな顔をするだろう。
私が自分のことを「俺」と言ったらなんて言うだろう。
永遠なんてものはきっとない。
だから俺は誰にも、私の名前を教えてやらない。
9/28/2025, 10:05:14 PM