ミキミヤ

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朝目覚めてリビングに行くと、テーブルの上に小さなメッセージカードが置かれているのを見つけた。

『お誕生日おめでとう』

そういえば今日は私の誕生日だったな、と思い出す。
メッセージカードの字は、一緒に住む彼のもの。彼は毎年こうしてカードをくれる。直接渡してくれる年もあったけど、今年は彼が仕事で早くに出かけてしまったからこういう形になったのだろう。
カードの縁では、小鳥がリボンを咥えて飛んでいる。カードの模様も毎年違って、私を楽しませてくれる。
私は、カードの縁を指で撫でながら、ひとり口元を緩めた。もう私は30歳をすぎて、自分では素直に年を取るのを喜べなくなってきた。でも、彼がこうして祝ってくれると、年を取るのも悪くないと思えてくるから不思議だ。今日の仕事も頑張れそう。私は明るい気持ちで朝食の準備に取りかかった。



誕生日だからって仕事が楽になるわけはなく、1日いつも通りに仕事をして、2人で住む部屋へやっと帰り着いた。

「ただいまー」
「おかえりー!」

玄関を開けて声をかければ、先に帰っていた彼の声がすぐに返ってきた。
パタパタと足音がして、彼が出迎えてくれる。

「お誕生日おめでとう!」

ハグをしながら彼が言ってくれた。
仕事で無意識に張り詰めていた心がふんわり和らいだ。

「ありがとう」
「えへへ、やっぱり直接言えると嬉しいね!」

私がお礼を言うと、彼はキラキラの笑顔で返してくれた。

「今日の夕食はごちそうだよ!」

私よりもルンルンな様子で彼が言って、リビングに戻って行く。

私が生まれたことを私以上に喜んで、お祝いの言葉を欠かさずくれる人がいるのって、すごく幸せなことだなあ。
彼の背中を追いかけながら、私は幸せな気持ちで胸がいっぱいになった。

10/26/2024, 11:38:18 AM