目が痛くなるくらい真っ白な世界に、わいわいキャーキャーとやたらにぎやかな声が響いている。
「チキンレースしようぜ」
「ソリで?」
「ソリで」
悪ぶったような顔を向けてきたが、耳当てやらダウンやらでモコモコになっているせいでいまいち決まってない。
「あのネット手前ギリギリまで滑ったほうが勝ちな」
どうやらチキンレースのルール自体は知っていたらしい。スリルはかけらも残っていないけど。
「そういうのって崖とか壁に向かってやるもんじゃないの?」
なんとなくそう溢すと、あいつは驚いたような焦ったような器用な顔をして見せた。
「そんなことしたら大ケガするだろ!」
さっきまでの悪ぶりが台無しだ。まあ赤いプラスチックのソリを引きずっている時点で絵面は0点だけど。
「ほら早くやろうぜ」
赤いソリが坂の手前へ引きずられていく。ふと辺りを見回すと低学年のやつらばかりで同学年がほとんどいないことに気づいた。
「今思ったんだけどさ」
ソリにまたがり準備万端といった様子のあいつは早くしろと言わんばかりの顔をしている。
「低学年に混じってソリやるのって十分度胸試しじゃない?」
「……それは言わない約束だぜ」
運動音痴二人組はそろって項垂れた。
11/13/2024, 2:47:51 AM