300字小説
憧れの重力
そこは憧れの場所だった。
コロニー外殻近くの老朽化した元建設作業員の仮設住居に住みながら、俺は母星である青い星を見つめていた。
あそこに住めるのは、億万が着く金持ちと研究者のみ。いつか、あの美しい星に降り立つのだと必死に努力した。
「博士、地球勤務、おめでとうございます」
「ああ、やっと夢が叶ったよ」
ひたすら勉学を積むことで俺は、ようやく地球の調査隊に選ばれた。シャトルで宇宙エレベーターに向かい、地上に降りる。
階が下がるごとに身体が重く、落ちていくような感覚を覚える。
「コロニーの擬似重力しか知らない方には惑星重力はキツイでしょう?」
眼下に近づく青の水平線と緑の地平線。
「いや、これも憧れの重さですよ」
お題「落ちていく」
11/23/2023, 11:27:03 AM