NoName

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こんな気持ちで書き殴ろうと
する言葉には涙が含まれて
撥水加工の無情な世界では
すべてはじき返される

誰に見られてもかまわないと
壁に大きく書こうとしても
ここなら誰も見ていないと
紙に小さく書こうとしても
世界が眠った後の夜空に
こっそり指で書いてみても
一字一句滑り落ちて
排水溝に流れ落ちて
処理場で削ぎ落とされる

やがて澄んだ海になり
そして純白の雲になり
今日みたいな雨になり
世界が潤いに満ちていく

湿った土や作物からは
嗚咽のニオイがすこし

「どこにも書けないこと」

2/8/2023, 9:54:57 AM