Ryu

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「探偵さん、犯人が分かったんですか?」
「えーと、犯人は彼ですね、きっと」
「…きっと?断定はされないんですか?」
「いや、状況証拠はそれを物語ってるんですけど、私はその時、現場にいなかったんで」
「それはそーですけど、ここであなたに犯人を名指ししてもらわないと、この事件が解決しないじゃないですか」
「名指ししてるじゃないですか。犯人は彼ですよ、たぶん。あとは警察にお任せします」
「…それじゃ、あなたは何のためにここへ?」
「探偵ですから、推理をするためです。推理、しましたよね?犯人はおそらく彼です」

警察は彼の推理を参考に捜査を進めた。
結果、犯人と名指しされた男には、事件当時、完璧なアリバイがあることが分かった。

「違いましたか。それじゃ…彼女ですかね、もしかすると」
「探偵さん、勘弁してくださいよ。前回の彼にはアリバイがあったじゃないですか。状況証拠が物語ってるって…」
「状況証拠というか、状況を見て私が推理した結果、です。事件当時、私は現場にいなかったので、彼が他の場所にいたという事実は知りません」
「いやいや、事件関係者に話は聞くでしょ。それぞれのアリバイだって確認するはずでは?」
「本人にアリバイなんて聞いたって、嘘つかれたら終わりじゃないですか。犯人が本当のこと言います?」
「いや…それが本当か嘘かを調べるのも、あなたの仕事では?」
「そんなの分かんないですよ。こんな雪山の別荘で、監視カメラもなければ人の目もほとんどない。どうやって調べろと言うんです?」
「そんな状況だからこそ、探偵のあなたを呼んだのに…まあいいです、それで、彼女が犯人だと?」
「ええ、私の推理が正しければ」
「それが一番不安なんですが…でも、彼女は目が不自由で、介護がないと階段を下りることすら危険なんですよ」
「え?そーなんですか?じゃあ違いますね」
「勘弁してくださいよ…」

古い洋館。資産家の別荘だったが、その主が何者かに殺された。
「そーいえば探偵さん、知ってます?この洋館、ご主人が亡くなってしまったので、売りに出すらしいですよ。しかも、かなりの破格で」
「なんですと?本当ですか?」
彼の表情が生き生きとしてきた。
事件の犯人探しの時には見られなかった熱心さで、屋敷内のあらゆるところを見回している。

まるで探偵のような、鋭い眼差しで。

10/15/2024, 1:07:41 PM