「ふざけんな!」
後ろで雑に束ねられた黒髪を揺らした少年は叫ぶ。そのまま同じ学生服を来た少年の胸ぐらを掴んで壁に押し付ければもう一人の少年は目を逸らし下唇を噛みながら俯いてしまった。
「今までお前が大好きな吹奏楽やめたって、なんも言わなかったけどさ。姉ちゃん殴るのはちげぇだろ!家族傷つけるのは違ぇだろ!!」
激情をぶつける彼は少年の言動を止められなかったことを悔やむように壁にぶつけた拳に力をいれる。もう一方の少年はその言葉を受け止めた後に顔を上げキツく睨んでから目線を外した。
「んなこと、自分が一番わかってる。でも周りも親も姉貴も、比べるんだ。俺を見てくれない。お姉さんなら、お姉ちゃんより、お前の姉は。どんなに努力しても俺はあいつを越えられない」
ぐしゃぐしゃと頭をかいた少年は絶望を宿した瞳でこう嗤った。
――生まれてきたことすら馬鹿みたいに思えるんだよ
お題【バカみたい】
3/22/2023, 10:58:42 AM