Yushiki

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 ガツン、ガツン、ガツン。
 何度も何度も重いハンマーを打ち下ろす。
 外装には私の知らない最新の技術が施してあると聞いていたから、そう簡単にはいかないかもなと思っていたのに、案外そうでもなかった。

 ガツン、ガツン、ガツン。
 装甲が剥がれ落ちていくさまは何ともあっけない。
 人類の最たる叡智だとか、未来への新たなる希望だとか、そんな陳腐な文言ばかり並べ立て、連日マスコミが持て囃していたけれど。
 何てことは無い。
 どう呼ぼうとも、所詮は人間に生み出されたただの機械だ。

「貴様、何をしている──!!」

 薄暗かった室内が懐中電灯の灯りに照らされた。暗さに慣れていた目が一瞬眩む。
 光の発生源を目で追えば、警備員らしき二人組がこちらを驚愕した表情で見つめていた。

「それが何だか分かっているのか!?」

 警備員の一人がこちらへ問い質す。
 どうやら私の顔までは、はっきりと認識していないらしい。

「世界初のタイムマシーンだぞ」
「それが何だと言うの」

 心はひどく冷め切っていた。私は再びハンマーを振り上げて叩きつける。

 ガツン、ガツン、ガシャン、ガシャン。

「こんなものが誕生してしまったら、人はダメになる」

 ガシャン、ガシャン、ガシャン、バキッ。

「人生で迷うことが無くなったら、人はどんどん退化するしかない」

 タイムマシーンの完成は、私にとって人生の念願だったけれど。

「私は未来で見てきたの」

 人の世に顕現させるには、きっとまだ早過ぎたのだ。



【タイムマシーン】

1/22/2023, 12:42:42 PM