さよならを言う前にキスをして。
そうお願いをすると、彼はちゃんとキスをしてくれた。
けれど、希望が叶ったはずの私の心は、何処か悲しくて、結局は何も言わずに彼の家から自宅へと帰ってる。
わかってる。わかってるの。
彼とはもう終わりって事くらい私は分かってるの。でも、さよならを言う前に、わがままを言って彼を最後まで困らせる女になりたかった。けれど、彼はそんな願いさえ叶えてくれなかった。
さよなら、バイバイ。好きだった。
貴方の最後の女になりたかったけれど、
無理だった。
さようなら。
さようなら、私の恋。
鼻をすする音。そして、ハイヒールの音だけが、明け方のまだ静かな道に響いている。
コツコツ、コツコツ。
8/21/2023, 5:44:48 AM