300字小説
帰郷
その昔、この島には人と魔人が一緒に暮らしていた。
しかし、海の向こうの王が魔人を殲滅すべく軍船に乗ってやってきた。魔人をかばえば島民も殺される。それを知った魔人達は島にあった古びた船に乗って大海原に去っていったという。
「島民達は食料をかき集めて船に乗せ『ごめん』『ごめんね』と見送ったそうです。この岬はそれ以来、謝罪の岬と呼ばれています」
俺の案内に青く広がる海を観光客達は眺めた。
「ガイドさん」
自由行動の時間、俺のもとに客の一人の背の高い男がやってくる。
「魔人はどうなりましたか?」
「解りません。何処かで生きていてくれることを願うばかりです」
男が額の髪を分ける。そこには魔人特有の第三の目が笑っていた。
お題「ごめんね」
5/29/2024, 11:57:47 AM