NoName

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「そんな顔しないでよ」
そう言われてから20年、あの子はまだかえらない

僕には暖かい家もあるし、帰りを待ってくれる人もいる
あの子にはそんな場所はなかった
家に帰れば置き手紙と1000円札しかない
そんなあの子が唯一楽しみと言えたのは団地の子達とするかくれんぼだった

それなのに、、

僕が鬼になって最後にあの子を見つけることになった
茂みの奥から鼻をすする音がした

「ずっと続けばいいのに」

何度も呟いていた

何も知らないフリをしていつものように

「みーつけた」

あの子にあんな事を言わせてしまった
つい哀愁をそそられて、自然と涙が溢れていたらしい

あれからあの子とはかくれんぼをすることもなくなった
唯一の楽しみを奪ってしまった僕が許せない

僕はずっと待つよ

「おかえり」と言える日まで

11/4/2023, 5:49:43 PM