忘れたくても忘れられない
「俺のこと、忘れてくれて良いからさ」
なんて、笑う君。
その顔は何とも言えない、少しだけ困ったような笑みを浮かべているから。
……忘れるとか、そんなの無理に決まってるじゃん。
そんな僕の気持ちが伝わったのか、彼は困ったような笑みを益々、深めて。
「これは、さ。俺からの最後のお願い、とでも思ってよ」
最後。
彼の口からサラッと出てきた、その言葉が悲しいから。
俺は目に溢れてくる涙を押し留めると同時に、彼の言葉への抵抗の意味を込めて。
強く、強く、彼を睨んでやる。
そして。
「お前はさ、僕のこと、もう嫌いになっちゃった?」
黙ったまま、首を左右に振る、彼。
「じゃあ、さ。僕からの最後のお願いを叶えてよ」
なんて。
この言葉には驚いたのか、彼は目を見開く。
けど、それに構わず、僕は言葉を続けた。
「最後の時まで、僕にお前の恋人でいさせて」
僕はお前がもうすぐ、この世からいなくなるとしても。
お前を忘れるなんて、そんなの絶対に出来ないんだから。
お前が忘れてほしくても。
僕が悲しさの余り、忘れたくなる時が来たとしても。
僕はお前を、絶対忘れられないんだ。
End
10/18/2024, 3:48:53 AM