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心の灯火。

提灯を持って、ただその火が消えない様に、ケタケタと下駄を鳴らして歩く。そんな風に生きてみたかった。
生き方ってのはそれぞれだ。僕は毎日同じものを食べ、飲み、感じ、見て、笑い、眠る。喜怒哀楽は平常で、突飛な事はご法度。それが幸せだ。
眠る時にふと天を仰ぐ。今日も、昨日も明日も少しも変わらぬ私の天井。天変地異でも世界戦争でも、親の離婚でも変わらない、この天井。
何か大切なものが無くなるのは、本当に一瞬で、一生で、人生の後悔なんてものはこの瞬間に支配されてしまう。
心に秘めた思いとか、10年越しの言葉とか、はじめの第一歩だとか、記念すべき出来事は幾らでも作り出せるのに、一度壊れた思い出のギターはもう戻らない。
心に灯火を宿し、滑稽なまでに一点で、精を出し、心根を健やかに保ったとしても、結末は唐突で無配慮だ。
だからかな。その灯火の株を移し変え、油を足し、窓を閉め、世話のかぎりを尽くしてやる。
まだ、消えないように。まだ終わらない様に。

9/2/2024, 3:31:53 PM