灰燼

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目を開くと、今にも溢れそうな涙をたたえたあなたがいた。

「――――!」
「――――!」

言葉を聴き取れない。手のひらに視線を落とすと僅かに透け始めているのがわかった。彼と目があった瞬間、数え切れないほどの思い出が鮮明に蘇った。

砂浜で花火をしながらはしゃいだこと。
人が埋まるほど積もった雪に飛び込んだこと。
初めて行った遊園地で誕生日を祝ってもらったこと。

どれも、あなたがいなければ絶対に経験できなかったことだ。あなたがいなければ、私はあの家で外の世界を知ることなく生を終えていただろう。だから。

「ありがとう。」

最後にこれだけは伝えたかった。私はうまく笑えているだろうか。最後の力を振り絞って彼の涙を拭い、泣かないで、と伝える。あぁ、もう、時間だ。

「愛してる。」

そう言って彼女は俺の目の前で泡になった。

6/20/2024, 12:07:23 PM