せつか

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歩くたび、サクサクと乾いた音がした。
足裏から伝わる感触もやわらかい。歩道を埋める茶色の葉はまるで絨毯だ。
視線を少し上向ければ、葉がすっかり落ちて黒い針のようになった枝が空へと伸びている。
今は青空に映える枝が、じきに白い雪を乗せて頭を垂れるようになるだろう。

枯葉を踏みしめながら並んで歩く。
言葉は無く、落ち葉を踏む音が二人の耳にやけに大きく響く。
平日の公園は歩く者もまばらで、数えるほどしかいない。ふと、悪戯心が湧いて男は歩道の柵をまたぐとでこぼことした根が張る木立の中へと歩き出した。
追いかけてくる気配に胸の内で微笑む。

歩道を外れると途端に歩きにくくなる。
落ちている枯葉も小さくやわらかなものから、大きな湿ったものに変わっていた。
木の種類が変わっているのだ。構わず奥へと歩き続けると、重なりあった落ち葉と盛り上がった土に足を取られた。滑って転びそうになるのを、すんでのところで止められる。

強い腕に、引き寄せられた。
「子供みたいな事をする」
咎めるような声に、思わず笑みが浮かぶのを抑えられなかった。


END


「枯葉」

2/19/2024, 2:48:45 PM