僕は今、酷く動揺している。まずいちょっと脈も上がってきたかも。
放課後。行きつけの猫カフェにやってきた。
入店の案内や手荷物をロッカーに入れるなどを終え、猫たちの待つ室内へ入るや否や、目に飛び込んできたのは、クラスの陽キャグループだ。髪を染めたりピアスを開けたりなど、とにかく派手なので、部屋の遠くにいても目立つ。
何で…あいつらがここに。僕の貴重な癒しスポットなのに。
友人にすらも教えていない趣味なのに。とにかく、ここはやつらに僕だとバレないように過ごさなくては。全く、何で癒されに来たのにビクビクしなくてはいけないのか。
…と、最初のうちは僕の身バレを恐れていたけど、意外にも陽キャ達には気づかれていないみたいで。各々、好きな猫を愛でたり観察していたりしている。
それはそうだ、学生にとって決して安くない料金を払っているのだから、一秒でも猫を愛でていたい。彼らとは分かり合えないだろうと思っていたが、愛猫家という点だけは同志と呼んで良いだろう。
特に僕の隣の陽キャの玩具捌きはえげつない。普段から使い慣れているのか、玩具の動きがまるで本当に生命が宿っているのかというくらい、自然で滑らかに床を素早く動いている。狩猟本能を刺激されたのか、近くの猫が次々と陽キャの動かす玩具に引き寄せられる。
曇りなき目で表情の柔らかい陽キャ。
これは敵わないかもしれないな、と僕は膝上でうとうとしている猫を撫でながら、そっと溜息をついたのだった。
【澄んだ瞳】
7/30/2024, 3:03:19 PM