もち

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みなみちゃんは、女の私からみてもかわいい女の子だ。

大きい瞳にくっきりとした二重瞼。上向きのまつげはビューラー要らず。横から見るEラインは彫刻のようで、リップなしで色づく唇は、幼い顔立ちの彼女に、艶やかなアクセントを施している。

みなみちゃんはかわいい。
だから彼女を好きな男の子はたくさんいるし、かわいい彼女は恋にもよく落ちる。

「あのね、私、坂口くんが好き」

恋に落ちた彼女は、いの一番に私にお知らせしてくれる。今度の相手は学年トップの坂口くん。二ヶ月前まで付き合っていたサッカー部キャプテンとは、真逆のタイプである。

「いいね、みなみちゃんに合うと思う」
「嘘。前もそう言ってたじゃん」
「だってどっちも本気だもん」
「ふぅん」

みなみちゃんの恋の相手はまちまち。サッカー部キャプテンの大倉くんに、ピアノの得意な神崎くん。数学オリンピック出場の伊藤くんに、そして今回の坂口くん。どの人も一芸に秀でていて、素敵で特別な男の子。ただ、ばらばらにみえて、一つだけ、確かな特徴があるのも事実。

「なぁんだ、さっちゃんが好きじゃないなら、わたし、本気出しちゃおうかな」

 つんと尖った唇に、思わず釘付けになる。ぽけぽけした私の様子に、みなみちゃんの大きい瞳が、不満そうに細められる。

「さっちゃん、最近坂口くんのこと見てたから、好きな人被ったらやだなって思ってたの」

そう。
みなみちゃんは、私が目で追う男の子を好きになる。

「…そんなことないよ、応援する」
「ふふ、ありがと」

 花のように笑う彼女は、ひどく蠱惑的だった。

「付き合えたら、報告するね」
「…うん、待ってる」

 みなみちゃんは、かわいい。
 だからきっと、すぐに彼女は私の元にやってくる。「付き合えたの」と頬を赤く染めて。


【神様だけが知っている】


側から見れば、私は道化。かわいい友人に敵わない。いつも恋路を邪魔される、可哀想で目立たない脇役。

でも、私はこの関係を気に入っているのだ。

誰にも言うつもりはない。親にも友達にもみなみちゃんにも。でも、それで良い。彼女が私に張り合う間、彼女の関心はずっと私に注がれているから。

7/4/2024, 11:49:35 AM