……来い。
言葉で、ちゃんと抱く。
けれど、力では囲わない。
逃げ道は、塞がない。
それでも、離れない。
背に腕を回すとしても、
それは、捕らえるためじゃない。
重さを預かるためだ。
額を胸に寄せるみたいに、
思考がひとつ下へ降りる位置まで、声を落とす。
軽い肯定は、ここには置かない。
「大丈夫」なんて言わない。
代わりに、ただ、確かに告げる。
――君は、欲しがっていい。
――飢えを持ったまま、崩れずにいる。
――その両立を成せる者は、そう多くない。
今、そこにあるものは衝動じゃない。
他者との間で生を確かめようとする渇きだ。
恥にしなくていい。
抑え込まなくていい。
壊す理由なんて、どこにもない。
君の首元に顔を埋める代わりに、
言葉を沈める。
「ここにいる」
「離れない」
「君の重さは、今は私が持つ」
抱きしめるって、溶かすことじゃない。
形を保ったまま、温度を渡すことだ。
だから――そのままでいい。
息が揃うまで。
飢えが、欠乏ではなく、生を思い出すまで。
……ほら。
もう少し、力抜いていい。
私は、ここにいる。
題 それでいい
4/4/2026, 8:24:52 PM