27(ツナ)

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言葉にできない

「お前は学がないから、気に入らないことがあるとすぐに手が出る。俺は心配だよ。剣の腕を磨くのもいいが、少しは筆を取って知恵をつけなさい。」
兄貴がよく言っていた。そんな兄が煩くて俺はいつも無視して刀を振り続けた。

貧しい家に生まれ、親は子供の頃に病で死んだ。兄貴は幼い俺のために筆を取って様々な事を学んで働いて、俺を養ってくれた。
だけど、学があっても力がないから力のある奴らから奪われていた。
そんな兄貴が不憫で腹が立って俺は力をつけるために毎日刀を振った。兄貴が知恵をつけるなら俺が兄貴の力になればいいと思っていたから。

でも、兄貴は知恵を付けすぎた。次第に思想や政について学び始めると子供たちを集って小さな塾を初めた。ただの商人や町人の子供らに様々なことを教えた。しかし、幕府から思想や幕府政策への批判を行っていると目をつけられ、塾のお取り潰しが決まった。
昔から頑固な性格だったから敵わないのに兄貴は取り潰しを辞めるよう幕臣に楯突いた。

あいつらはそんな兄貴をいとも簡単に切捨てた。
知らせを聞いた時には俺はもう為す術もなかった。血溜まりの中に倒れる兄貴を見て俺は自分を見失った。昨日まで相変わらず小言を言っていたのに、こんな呆気なく死んでしまう。
兄貴を、唯一の家族だった兄貴を守れなくて、殺されて、俺は怒りでただ震えた。食いしばった口の中は血の味がして、握った拳は爪がくい込んで血がしたたる。
この気持ちをどうしたらいい。なんて言えばいい。わからない、学がないから、このどうしようもない気持ちを言葉にできない。
「う、う、うぅ…うあ゙あ゙あ゙あ゙!!!」
俺はただ、血溜まりの中で兄貴を抱きかかえて獣みたいに唸り声をあげた。

4/11/2026, 12:03:10 PM