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▶124.「風が運ぶもの」
123.「question」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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イレフスト国ナトミ村にて

この村では、オリャンという果樹が多数植えられている。一面のオリャン畑は圧巻であり、観光客が訪れることも多い。
酸味が強すぎて生食用には適さないが、洗濯の補助剤としてイレフスト国内では広く使われている。
村人は熟した実をジャムに加工し食べている。また、観光客向けに瓶詰めとして販売している所もある。

オリャンは柑橘類で天候の変動に強く、一年中花が咲き、また結実する。
洗濯に熟し具合は関係ないため、日持ちがするよう若い実を収穫し、これを国内各地に出荷している。


ここ、ナトミ村で風が運ぶものといえば、もちろんオリャンの香りだ。
爽やかな香りが村全体を包んでいる。

そんな場所に、ある噂話が届いた。

「『シルバーブロンドの男に気をつけろ?』おめ本気で言ってんのか」
「だぁって出荷で行くとこ行くとこ持ち切りなんだもんよ」

話を持ちかけた方はタジタジになりつつも、自分の得た情報を必死に伝えている。

「だからっておめーよォ。シルバーブロンドつったら、前に村来た旅人さんだろ?出処はどこなんだ出処は」
「それがどうも軍が流してるらしんだ」
「それじゃ軍がクロに決まってら。長んとこ行くか」


「また軍か」
「どうします?やっちまいます?」
「おめは何でそう血の気が多いんだっ」
「いてっ!なんだよー血の気が多いのは長だろー!」

「茶番は置いといて、だ。風は我らにとって良いものを運ぶが、時に良くないものも運ぶ。人の業だな」
「茶番で人を叩くなよ」
「とはいえ、とはいえだ」
「聞けよ長」

ナトミ村はオリャンの生産によって規模を大きくしてきた。
国からは町に昇格して高い税金を納めろと言われているが、
何の利益も見い出せないため断り続けている。

(のどかな村だからこそ良いオリャンを作り続けられるというに)

「ま、日頃の鬱憤を晴らすくらいなら」
「長?」
「ちょっとだけだぞ。オリャンの実は作り続けねばならんのだから」
「よしきた、みんなを集めてくるぜ」

3/7/2025, 9:37:21 AM