縁側に、かき氷に風鈴に西瓜。ああ今日も遠くで電車が走っている。
電車がやってくる。この夜中に。私は裸足でホームに立ちそれを待つ。夜明け前の一番暗い時間。静かな月の匂いがする。向かいに生えた草が海の如く波打った。
パーカーのフードを被り、横たわる。曇りで星は見えぬがそれもまたいい気がしている。誰もいないホーム。ペタペタと足音を立てて走ったりしてみる。
少し車輪が浸るほどの水を掻き分け、静かなホームにやってくる電車の音。遅れて風もやってくる。私の風呂上がりで濡れた髪を揺らす。
同時に空く電車のドア。無機質に中へもてなすので、私は乗る。いつもみたいに窓際に立って外を眺めるが、人が一人もいないことに段々と寂しさと恐怖を感じその場にしゃがむ。
深夜であるから私はいつの間にかパーカーで温まる自分の体温が心地よくなり寝てしまって、その間に一駅二駅と過ぎていく。誰かが乗って誰かが起きたのか、だとすれば私は気づかれなかったのか、気になるところではある。
黄泉
終点、
現世
あなたはどちらがご希望か。
〈終点〉2023/8.11
No.18
8/10/2023, 5:45:29 PM