夜兎

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幼い頃からずっと一緒に居た。
3人でいるのが当たり前で、これからもそれは変わらないと思ってた。

______その親友2人が、恋人同士になったらしい。風の噂でそれを知った。

隠し事をされるなんて初めてだった。
何でも話せる関係だと思っていたのは、私だけだった。
こぼれ落ちるため息は、誰の耳にも届かず風に溶けて消えていった。

それが、転機だったのだと思う。
父の転勤が決まり、引っ越すことになった。
慣れ親しんだ土地を離れるのは寂しいけれど、ほっとしている自分がいた。2人と顔を合わせずに済む。
それだけで、気持ちが軽くなった。

「……紗奈…引っ越すって本当?」

「うん。それがどうしかした?」

「何で、教えてくれなかったの」

「よく言うよ……小森と付き合い始めた事を隠してたくせに」

「っ……!それは……」

「遅くなったけど、2人ともおめでとう。お幸せに」

清々しいまでの作り笑顔を浮かべた。
小森と杏の引きつる表情がすべてを物語っていた。

________知っているよ。
小森と杏が互いに思い合ってたのを。
私は、最初から邪魔だったんだよね。
だから、消えるね。

背を向け歩き出す。
頬を伝う冷たいものに気付いても、何もなかったふりをした。












#friends

10/20/2025, 12:25:57 PM