いぐあな

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300字小説

そらまち

 私は、ただここに存在していただけ。そんな私の地中に埋まった背の上に豊かな森が出来、生き物達が住み始めた。彼らの儚い生の営みにいつしか私は夢中になった。特に『人』というのは面白い。村を作り、町に育て、大きな都市に。その中で繰り広げられる愛憎劇に聞き耳を立てるのがいつしか楽しみになっていった。
 やがて、私は『人』達の会話から、ある国がこの都市を狙っていると知った。そのとき、私は痛烈に背中のモノ達を愛おしいと守りたいと願った。そして知ったのだ、私が生きる意味を。

 目の前の都市に攻め込もうとしていた軍勢を突如、地震が襲う。
 そして、兵士達は見た。朝日の中、都市を背に乗せた鯨が悠々と空に飛び立っていく姿を。

お題「生きる意味」

4/27/2024, 11:42:33 AM