Non

Open App

 日記を読み返していた。書き始めは中学1年生。あまり物事を継続的に行うことができない性格なもので、三日坊主もいいところ、2日目にはめんどくさい気持ちが勝ってしまうタイプだった。

 ところが日記に関しては違ったらしく、日付が途切れることなく続いていた。新しい友達ができた、部活の先輩が怖い、生活指導の教員がうるさいなど、他愛もない日常が綴られていて、懐かしさで胸がいっぱいになった。こんなことを考えて過ごしていたのね。

 ふと、ページを捲る手が止まった。あれだけ毎日しっかり書いていたのに、日付がごっそり抜けている期間があったのだ。中学3年生の終わりから高校1年生の終わりくらいまで。それ以降は大学の卒業まで日付が続いている。

 何だろう、遅めの厨二病でもきて、後で恥ずかしくなって捨ててしまったのだろうか。考えてみても思い
出せない。…やっぱり思い出せない。この期間の私がいったい何を考えて過ごしていたのか、分からない。

 社会人になると同時に忙殺され、日々を綴る余裕も無くなってしまい、日記の習慣は消えてしまった。それから何十年も経つ。遠い昔の話だ。

 遠い昔の私、どうして書かなかったの。あるいはどうして消してしまったの。今の私の記憶にはもう残っていないみたいなの。日記がなくちゃ思い出せないじゃない。ああ、昔の私を知る手段、閉ざされてしまったわ。


『閉ざされた日記』

1/18/2023, 10:51:05 AM