ゆずし

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 おぎゃあ……おぎゃあ。

 その日、一つの生命が生まれ。
 一つの生命が尽きてしまった。

 ぼくの最愛だった彼女は生まれつき身体が弱かった。なのに、身篭った際は絶対に産むと頑なになった。
 医者共々最善の準備を尽くしたが、彼女は出産と同時、力果てるように安らかに、生命を引き取ったのだ。

 産声を上げて、元気よく泣く赤ちゃん。
 この子はぼくと彼女の愛の結晶なのだ。

 ようやく落ち着いた頃、改めてその子とぼくは対面した。あまりにも小さなその手を優しく握った。

 彼女と……いや、母さんと交わした約束なのだ。ぼくは立派な父さんとなって、この子を必ず幸せにすると。

「I love you」

 文字通り命懸けで託したこの子に、
 誰よりも深い愛を込めて。

 極めて優しく、その言葉を囁いた。

2/24/2023, 2:50:32 AM