【カーテン】続き… 主人公の胸の内
ヒロシは午後の陽を纏ってひらりひらり舞うカーテンを長くなった芋虫の様になった灰の煙草を持ったまま、ぼんやりと見ていた
白いカーテンは幸せな家庭の象徴の様に結婚当初は思って眺めていた
いつの間にか「ダイニングテーブルで煙草吸わんといて!今時、紙煙草なんて親父臭い!
笹山さんのとこのご主人も飯田さんのご主人も
電子タバコに替えたと言うのに、アナタって本当に進歩のない人ね」
「私…カーテンは絶対に白がいい!ねっ!良いでしょ?」と可愛い声で家具屋で話しかけた同一の女とは思えない声の女房が私の背中に向かって投げつけた日々は何年前の事だろう
それだって、幸せな家庭の形だと…
独りになって…孤独になって
話し相手が居る、空気が波打って伝わる
此処に居てくれるだけでいいと
しみじみとあの怒鳴り声を愛しく思い出すんだ
私は耳を傾けなかった、カーテンが揺れる様な物だと感じていた
耳障りにさえ感じていなかった
このままで良かったんだ
みんな多少我慢して生きてるだろ?
だけど、女房は私を進歩のない人間だと言った
伝わらない怒りを、もどかしさに、真摯に向き合わなかったあの時の自分に
見るのはカーテンじゃなく女房の顔だと
離婚を切り出されて……普通の生活が当たり前だと思っていた…そう思っていたんだ
6/30/2025, 10:25:01 AM