ひらりひらひら桜舞う。
雨に打たれて、日に焼かれ。
春の陽気にふるえた桜が、
先にさきにと、生き急ぐ。
逃してなるか───!
そんな心で、カメラを手に、
カシャリと音を、弾ませる。
色はかんぺき
形もカンペキ。
それでも何か、足りていない。
あと一つだけ、何かが足りない───!
思わず、くしゃりと握ったそばから、
予備のフィルムが転がり落ちる。
───ね、落としましたよ…?
そんな優しい音色と共に。
細い手のひらが、画角を遮る。
フッと息抜き、
笑顔をともに、視線を上げて…
「あぁ、ありが…」
……そこに居たのは花の精。
桃色の服をふわりとさせて。
小さく小首を傾げてる。
なりふりなんて、かまいやしない───。
差し出された手を、勢いのまま。
それでも優しく握りしめる。
視線は鋭く、瞳のなかへ。
まっすぐ、まっすぐ思いを込めて。
「一つだけ。頼まれてくれ!」
───はい。
そうして撮った花の写真は、
『一つだけ』
とは、いかなかった。
4/3/2026, 12:00:25 PM