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眠りにつく前に

終電の時間をもう覚えてしまった。
まだ引越して一か月も経っていないのに。

ぴかぴかで薄汚れた他に映る影もない通勤電車の床をじっと見る。
今日のシートは座った瞬間ふかふかだった。嬉しい。
小さな喜びをかき集めてなんとか息をしている。
さもなくば破裂していたかもしれん。
ぼんやりと今日一日のことを考える。
昼何食べたっけ。昼出てこないのはヤバいな、ヤバいぞ。頭の中に何かドロっとした重たくて生暖かくて心地よい何かが充填されていく。そのまま身を任せたくなる。
ハッと覚醒した、ここで寝てはいけない、次で降りなければ。

眠りに落ちるのをあと数時間スキップするために必死で頭を再回転させる。
ホームに降りる、駅横のコンビニに行く。あんまんを買う。あんこの熱さで意識を保つ。自宅は駅から徒歩15分。大通りの道をなるべく通っていく。道は大分覚えてるけどまだ怪しい。迷ったら詰みだ。
アパートは安い代わりに結構な築年数だ。廊下の音はかなり響く。変な時間の帰宅だと同フロアの人にも気を遣う、何のお仕事されてるんだろうとか思われるといたたまれない。
部屋に着いたらまず風呂を張って、これは無理かも、シャワーを浴びて、せめて日付が変わる前までには眠りにつきたい。

哀しいかな、まだ今日を終えられない。

11/3/2024, 1:45:09 AM