Kissの続き
溢れる気持ち
その姿を見て 身体が地面に縫い止められた。
シルクの様にさらさらとした長い髪
燃えるルビーの様な瞳
その瞳から流れる 真珠の様な涙 その流れる涙を見た時 その雫を舌で舐め取りたい衝動に駆られた。
追いかけて 追いかけて 何故こんなに
追いかけているんだろう....
食べたいから でも 妙な事に空腹感は
感じていない... なのに逃げられると
追いかけずには居られない...。
俺はそれを俺の内から溢れる本能だと
思っていた。
肉食獣は、草食獣に逃げられたら
追い掛けるものだと だからこれは
普通の事だと....
だけど他の草食獣に出会っても
空腹時以外は、何も感じない
追い掛ける気すら起きない....
なのにあのシロウサギだけは、違った
逃げられると腹が立ち捕まえずには
居られなくなる。
俺はその衝動が何なのか今まで分からなかった。
だけど あの時 彼女の唇の感触を
味わって気付いた。
この溢れる様な衝動が何なのかを....
「あっ ヒイロこんな所に居た
何 こんな所で一人で黄昏れてんの!」
仲間の声に俺は振り向く そしてふと
仲間に向かって言葉を零す。
「なあ・・・恋って何だろうな...」
仲間は、きょとんとして...
「何言ってんの あ~あもうすぐ
発情期だもんね!子孫を残す為に
男達は、花嫁候補を探すのに躍起に
なってるよ! まぁ生存本能だから
仕方ないけど ヒイロがそんな事聞くの
珍しいね 好みのメスのオオカミでも
居たの?」仲間は、首を傾げて居る。
「いや・・・何でも無い・・・」そう言って俺は立ち上がる 仲間はそれ以上何も
言わず俺の後に付いて行く
そう恋は、生存本能 子孫を増やし群れを
繋げて行く生き残る為の衝動だと思っていた 俺も成人になったら子孫をたくさん
増やしてくれそうなメスのオオカミを
見繕って そうして自分だけの群れを
作る。
それが俺達オオカミの生き方だ。
だが あの時の溢れる様な衝動は、
生存本能とは違う気がする...。
もしあの時の衝動が本当の恋だとしたら...
このぐちゃぐちゃで醜い欲望が恋だとしたら...
恋とは、何て残酷な物なのだろう....
こんな気持ちを知ってしまったら
(アリス...君が欲しい...)
彼女の顔が頭の中でループする。
アリス アリスと心の中で何度も呟く。
気付いてしまった溢れ出すこの気持ちを
止める事など今の俺には、不可能だった。....
2/6/2024, 1:37:36 AM