【夏の忘れ物を探しに】
夕暮れの港町。潮の香りに包まれながら、彼女は小さな旅支度を整えた。
胸の奥に残る「大切な何か」を探すために、遠くに向かう決心をしたのだ。
不思議なことに、そのきっかけは夢の中にあった。
夜ごと現れる光の扉。そこには未来へ続く合図のように、ひとつの道が示されていた。
扉を開けるには勇気が必要だと分かっていたけれど、彼女はもう迷わなかった。
やがて、静かな波に揺られながら船は進む。
心に巣くっていた重さは、潮風に溶けていくようだった。
きっとこの度の先で、夏に置き忘れた希望を見つけられる。
そう信じて、彼女は海の向こうへと目を凝らした。
9/2/2025, 4:01:30 AM