青く広がる海と空の境界線で、
17歳の天使の少女ルナはそっと羽根を揺らしていた。
透明に光るその羽根は、太陽を浴びて淡い虹色に輝く。
「今日は、どこに行こう…」
そうつぶやく声は、ほんの少し寂しさを含んでいた。
ルナは人間界に降りることを許されているけれど、長くはいられない。
限られた時間の中で、世界の平和を願い、
人々の心に小さな光を届けるのが役目だった。
20歳の青年、アオトは海沿いの研究施設で働いていた。
メタンハイドレードの海洋資源を調査し、
環境やエネルギーの持続可能性を考える日々。
若さと情熱にあふれ、豊かさや幸福を科学で支えようと努力していた。
ある日、海岸で資料を整理していると、白い羽根が風に舞い落ちてきた。驚いて見上げると、ルナが空中で揺れていた。
「…え?天使?」
ルナは微笑み、短く手を振った。アオトは息をのむ。
目の前にいるのは、空想の中でしか見たことのない存在だった。
それから二人は、静かな海と青空の下で毎日を過ごすようになった。
ルナはアオトに、天国での暮らしや、
人間界を見守る使命について語った。
アオトは科学者としての夢、世界をより良くしたいという思いを語った。
けれど、二人には叶わぬ制約があった。
ルナは時間を持たず、アオトは地上に縛られている。
どれだけ心を通わせても、二人は永遠に一緒にはいられないのだ。
ある夕暮れ、ルナは羽根を大きく広げ、アオトの前に舞い降りた。
「アオト、ありがとう。あなたの世界のために、私は少し力を貸すね。」
ルナの羽根が一瞬輝きを増し、海の波間に光の道ができた。
その光はメタンハイドレードの海底資源と海洋環境をつなぎ、
豊かさと健康、世界の平和への小さな可能性を象徴しているようだった。
「僕も…僕も、君に負けないくらい頑張るよ。」
アオトは握りしめた拳を海風にさらし、心の中で誓った。
ルナは微笑みながら、ゆっくりと天へと舞い上がった。
揺れる羽根は夕日に照らされ、虹色の光をまとう。
ルナが見えなくなったあとも、海と空には彼女の存在の温もりが残った。
アオトはその光を胸に、環境を守り、
世界の平和を願い、豊かで幸福な未来を築くことを誓った。
天使の羽根は、消えたわけではない。
ただ、人々の心に、揺れる光として残り続けるのだ。
揺れ
る
羽根🕊️ 完
10/25/2025, 10:53:02 AM