僕らはいつも形のないものを贈りあっていたな、と君が亡くなってから気付いた。
君の亡骸が手に入らないなら思い出に浸ろうと、君との写真などを見返していたけれど、写真数枚と手紙数通しか君との思い出はなかった。
あぁ、お互い愛の言葉はよく贈りあっていた。
これは期待込みだけれど、そこに愛情も含めてくれていたと思う。
あとは、実際二人で密会ばかりしていたもんだから、一般の恋仲が贈り合うような花束や小物入れなどの贈り物やメールのやり取りはほとんど無かった。
まぁその点で言えば、時間はお互い贈り合っていたのかもしれない。
君がそんなに機械に詳しくないもんだから、電話をするならスマフォなんか使わないで黒電話でしていた。
それも形の無いものだ。
この時はこんな電話をしたな、なんて浸りたいもんだけれど、何せ履歴なんて残らない。
あぁ、駆け落ちの様な関係で出会ったから、君との思い出しか手元には残らない。
僕がずっと生きていけば、頭の中の君は段々と色褪せていくんだろうか。
それは嫌だ。
ずっと心の中にいて欲しい。
1番に君を思い浮かべたい。
この形の無いものが、形になる時代まで、忘れたくない。
今すぐ、君のもとへ行こう。
#形の無いもの
9/25/2023, 3:38:23 AM