kiliu yoa

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 私は、落ちこぼれだった。

 兄のような聡明さも、弟のような天賦の才も、双子の弟のような優れた五感も、私は、持ち合わせて居なかった。

 でも、それでも、良かった。

 母たちは、よくこう言ってくれたから。

「貴方には、忍耐力がある。その才能は、目に見えた結果を出しにくい。
でも、時を経て成熟すれば、誰にも負けぬ武器と成るから。そんなに、自分を卑下しないのよ。」と。

    でも、時は待ってくれなかった。

 ある日、父が暗殺された。母たちは、私たち兄弟を追手から逃すために亡くなった。逃げる最中、兄と双子の弟は、夭折した。

 逃げ続ける以外、当時は何も出来なかった。

 弟を安心させるために、よく微笑むようにした。かつてのように…。
家族を思い出し、安心させるために。

 本当に…其れしか、出来なかった。何も出来なかった。

『これ以上は、守り切れない。』そう感じた。

 だから、此処より幾度も遠い、南西に向かう船に乗せた。行き着く先の国は、どんな国かも分からない。此処よりはマシだと…、祈ることしか、私には出来なかった。今生の別れだと…、諦めるしか無かった。

 八百万の神よ、先祖よ、弟をお守り下さい。どうか、少しでも、弟の人生に幸と、安らぎが訪れますように。


 

8/24/2023, 4:49:57 PM