冬山210

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『海へ』

くじらの心臓を探しに行きましょう。
空にあったはずなのに失くなっちゃったみたいだから。

きっと海へ落としたのだと思う。
恋しくなったのよ。くじらだもの。
この海へ還って来たかったんじゃないの。

だけど貴方だけ行って、遺された身体はどうするのよ。
寂しそうよ。心臓或いは頚が無いんじゃ、いくら怪物だからって生きてるとは言えないでしょう。

だから海へ行きましょう。
くじらに心臓を届けるの。
海の底に沈んでしまった眩い光を掬い上げて、
空で泣いてる身体の元へ導いてあげるのよ。

そうして今一度『くじら』になって、
『くじら』の姿でこの海へ還って来なさい。
きっと海は貴方を受け入れるから。





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『海へ』というお題を見て真っ先に浮かんだ言葉は、「海へいこう ありす」だった。
これは日渡早紀先生の『ぼくの地球を守って』という漫画に出てくる詩、「みおくる夏」の最初の一文。

8/23/2022, 7:28:01 PM