300字小説
守られた時間
「なあ! マック寄ろうぜ!」
「今日は塾がある日なの!」
「いや、まだ時間あるだろ! じゃあ、スタバで奢ってやるよ!」
「どうしたの? 今日はやけに引き止めるよね」
そう幼馴染が振り返ったとき、目の前の歩道に車が突っ込む。甲高いブレーキ音に悲鳴。目を丸くして立ちすくむ幼馴染に俺はこっそり息を吐いた。
犠牲者はいなかったとはいえ、さすがに目の前で起きた事故にショックを受けた幼馴染を家まで送って帰る。
自分の部屋に入り、机の上の差出人不明の手紙を手に取る。
『事故で彼女を失って以来、俺の時間は無いも同じ。俺が失った時間をお前は守ってくれ』の言葉と共にさっきの事故について書かれた手紙。
「俺の時間は守れたぜ。ありがとう」
お題「失われた時間」
5/13/2024, 11:56:52 AM