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熱い鼓動


その姿を目にした時、思い出したのは奪われた憎しみよりも自分たちを守り戦う暖かで大きな背中だった。




再戦、と言う言葉が相応しいかもわからない。
再びと対峙した『鬼』は寸分違わぬ姿で立ち塞がった。

思わず日輪刀を握りしめる手に汗が滲む。

忘れもしないあの夜、動きを追うことしかできなかった斬撃を今は躱せる。通用する技も覚えた。あの時とは違う。でも足りない。まだ足りない。

目の前で庇われる背中に傷が増えていく。
同じ事を繰り返させない。
庇われるだけではダメだと言うのに。
通用する技も覚えたと言うのに。
考えろ、考えろ、何が出来るか考え続けろ。

焦るな焦るな焦るな。
必ずチャンスが来るはずだ。
額に滲む汗が日輪刀の鍔に落ちた。

思い出すのは微笑みだった。
心根の清くて強い、優しくて暖かいその笑顔は最期の最期まで泣くしかできない自分を鼓舞する様に照らし続けた。
『君たちを信じる。』
その言葉を忘れた日は一日としてない。

悲しみだけでは届かない。
憎しみでは打ち克てない。

燃やせ、燃やせ、心を燃やせ
歯を食いしばって前を向け

呼吸を研ぎ澄ませ。
一瞬の動きを見逃すな。
信じてくれた想いを繋げ。
もっと、もっと、もっと。

体中を煮え滾るような血が巡る。
握りしめた両手からドクンドクンと鼓動が鳴るかのようだった。息を吸って吐く。全集中で全ての神経を研ぎ澄ませる。

『強いものは弱いものを助け守る。
そして、弱いものは強くなり自分より弱いものを助け守る。』

腹の底から搾り出す声はかつて命を賭けて繋がれた縁の教えだった。漆黒に輝く刃を支える鍔が頷くようにカチャリと音を鳴らす。守られたからこそ知っている、その重みと大切さを。だからこそ、負けらない。

『猗窩座、お前の考え方を許さない。』
信念と決意と、信じて貰った願いを背負って
断じて認めるわけにはいかないこの鬼を此処で止めてみせる。

『これ以上、お前の好きにはさせない!』

今此処で、全ての因縁に決着をつけよう。
ドクリとなった心音と共に決戦は始まった。







鬼滅を観に行きたいです。


7/31/2025, 4:07:59 AM