kiliu yoa

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 辺り一面を流れる淡い緋色の水。空は、明るく白い雲に覆われて顔を出さない。人は全くといっていいほど居らず、なんとも孤独で、夢見心地だった。
 
 首から足にかけて濃紺の包帯が巻かれ、その上からクレ染めの装束を着て、手には刀を持っていた。よく見ると何時もより手や足がひと回り小さい。頭巾を被って居らず、何だか落ち着かないが懐かしくもある。子どもの頃に戻ったみたいで、心地良くて鼻唄を唄ってしまいそうだ。

 
 遠くから声が聞こえて、目を凝らす。


 今は亡き最愛の人と同じ声だった。
 声が小さくて聞こえず、近寄ろうとした時だった。「まだ、此方には来るな。」と、明瞭な声が聴こえた。
 
 次の瞬間、目が覚めた。

 

6/27/2023, 11:22:50 AM