自転車に乗って…
…
私の人生で車の免許を取るという選択はなかった。

私以外は殆どが車の免許を持っていて、私よりもおっちょこちょいなうっかり屋の人まで、ちゃんと取得している。

普段はおっとりしているのに、運転をさせると人が変わるタイプもいて、多分私には性格的からも運転の相性は良くないと思っている。

行きたい場所へは、最寄りの駅まで歩くか自転車で行き、地下鉄に乗るしかない。

遠くまで出かける時の、バスやJRはずーっと気持ちがそわそわと、昔から落ち着かない苦手な乗り物だ。

春から秋までは、天気が良ければ殆どが自転車に乗り、買い物や近場の用事を済ませるのが日課だ。

お気に入りのサイクリングロードの坂があって、何度昇って降りても季節の移ろいの景色を眺めるのがとても好きだ。

特に好きなのは、夕焼けが始まったあたりの空を坂の上から豪快にさぁ〜っと降りて見る、あの両手を広げたら包めそうな丸い空…雲と光が混じり合って紅く染まっていて、何ともいえず毎回、ちょっと泣きそうになる。

少し外の空気を吸いながら、考え事をまとめたい時、悩み事が堂々巡りになって辛い時、ふら〜っとあてもなく、自転車に乗って気ままに足が辛くない程度に漕いで漕いで…ここ、どこだろう？と大人なのに、迷子になったことも度々あった。

そんな時は、公園を見つけてちょっとひと休みしてから、側を通る人を見つけて、素早く『ここはどの辺りでしょうか？迷子になってしまって…』と聞く。

だいたいは、え？迷子？あなた…大人よね？という顔をされつつ、ちょっと笑われて親切に帰り道を教えてもらう。

お礼を言って照れながら、帰り道を教えて貰った事に感謝しながら戻る道は、もう頭の中のモヤモヤは晴れていて鼻歌を歌える自分になっている。

亡くなった父から貰った今どきの、お洒落な自転車ではないけれど、耳元で風をきる私の足加減で、何処にでも連れて行ってくれる大事な私の相棒。

自転車に乗って、明日は何処へぷらぷらしてこようかな〜
晴れたら、いいなぁ…




*読んで下さり　ありがとうございます*

8/14/2023, 11:45:43 AM