頭の悪い高校生

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「 私 、優しくないよ 。」
ブランコを漕ぎながら 、急にそんなことを
呟く彼女 。
一体どうしたのだろう。そんなことを思いながら 、私はなんて返そうかと 考えた 。
それでも何も思いつかなくて 、
私は彼女に対して 何も返答できぬまま俯いた 。

「 そんなことないよ 」
なんて 、なんだか無責任な気がして 、私には到底言えなかったのだ 。


その無言の空気を切り裂くように 、
彼女は言葉を続けた 。
「 あんたみたいに 、」
…と。でも、私にはそれがどういう意味か
分からなかった 。


「 どういう意味? 」
そう聞こうと思った瞬間 。
紺色の靴が一つ 、宙に舞った 。

── 彼女の靴だ 。

その靴は思ったより遠くへ飛んだようで 、
彼女は少し焦りの表情を見せつつ ブランコから立ち上がり 、無言で片足を上げながら必死に 靴の飛んだ方向へと向かった 。

そして紺色の靴をしっかりと履き直した彼女は 、
「 じゃあね 。」と 一言 。
私も咄嗟に「 またね 。」と返す 。




そんな出来事から 、 約数ヶ月が経過した 。
彼女には未だに あれがどういう意味で 、どういう意図があったのかは聞いていない 。
いや 、聞いていないのではなく 、聞けていないの方が正しい 。

私は 、誰もいない教室で1人 。
彼女の机の前に立つ 。
そっと木目をなぞり 、 椅子を引いて 、彼女の席へと座る 。
窓から入ってくる爽やかな風と 、キラキラと光る太陽の日差しが心地よくて 、なんだか眠ってしまいそうだ 。
そういえば彼女は 、この席でよく授業中に居眠りをかまし 、先生に怒られていたな 。
なんて 、懐かしい思い出に浸る 。

彼女の机の上に置いてある 、白い一つの花瓶と 、その花瓶の中に咲いている一輪の花 。


「 ねぇ 、私だって 、優しくないよ 」

彼女がどういう意味を込めて 、
あの日私にあの言葉を向けたのかは 、
彼女に聞かないと きっと永遠に分からない 。

でも 、一つだけ言えることは 、本当に私は優しくなんかない 。ということだ 。
私は優しいのではなく 、「 断れない性格 」なだけである 。

だから リーダーシップのある 、正義感の強い彼女に 、私はずっと憧れてた 。


私が いじめられていることに気づいて あなたが私を守ってくれた あの日のことは きっとこの先もずっと 忘れない 。
… まるで 昨日のことのように 、鮮明に思い出せる 。

でも 、そのせいであなたは 、
あの日からいじめの標的になった 。
それに私は気づけなかった 。
気づいたのは 、 あなたがいなくなったあと 。
「 … ねぇ 、どうして 、言って … 」
くれなかったのか 。
言ってくれたら 、もしかしたら助けられてたかもしれないのに 。

「 … 確かにあんた 、優しくないよ 、」
私に隠し事するところとか 、
私を置いて1人で先にいってしまうところとか 、
1人取り残された私の気持ちも考えずに 。

言ってよ 。いくなら 。
言ってくれたら 、私も一緒に いってたのに _ 。


「 ねぇ ? 今からでも遅くないかな 、? 」

私は 優しくないから 、あんたの気持ちなんてこれっぽっちも考えていない 。

それでも 、分かってる 。私がそっちにいってあなたに会えば 、大激怒されることくらい 。
でも 、もし大激怒されたら 、私も大激怒してやるんだから 。
「 怒りたいのはこっちだ ! 」ってね 。

で 、2人して疲れるまで激怒しあったらさ 、
またいつもみたいにバカ笑いしようよ 。
だから 、…
「 まっててね 。」


Fin .

2/1/2023, 1:47:12 PM