『街へ』
「ねぇママ、あの煌めく景色が街なの?」
真夜中の山で、そう囁く子狐に
「そうよ、きれいでしょ
だけども、絶対にあそこへ行ってはいけないよ」
と、母狐は強い口調で釘を刺したのです。
「ちぇー、そんなのつまんない!
あんなにキラキラしててきれいなのに!」
翌日、子狐は街へ下りました。
たくさん怖い事がありました。
命からがら、山へ帰りました。
「おかえり!だから、絶対に行ってはいけないと
言ったのに!でも無事で良かった!」
と、母狐は泣いていました。
「煌めく景色は煌めく景色のままでいいんだよ。
近寄ると、見たくないものまで見えてしまうから」
子狐は小さな声で「ごめんなさい」と言いました。
母狐は、その声を聞き、子狐が生きて帰ってきた安堵と喜びで、ワンワン泣きました。
つられて子狐もワンワン泣きました。
1/28/2023, 3:39:55 PM