NoName

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意識はしてないが、捉え方によっては注意












「ねえ」
突然、話しかけられた。
「なに、×××」
できるだけ明るい声で返したつもりだったが、寝起きで掠れていたらしい俺の声は、ひどく気持ち悪く感じた。
「俺、引っ越さなきゃいけなくなっちゃったんだ」
初耳だった。お前からそんな話は聞いたことがなかった。
「…へぇ、そうなのか」
どこに引っ越すのだろうか、ここから遠かったらもう会えなくなるのかな、なんてことを考えながらテキトーに返事をする。
「え、もっと悲しんでくれるかと思ってたのに」
「いや、別に死ぬわけじゃねえだろ」
残念、と口を尖らせて目を細める。
「そうだけどさ、会えなくなるんだよ」
まあ、それは確かにそうだ。
ほぼ毎日ここに来て、いつも遊んでいる俺たちが離れたらどーなるんだろ、とは思う。
「…安心しろ、いつでも会いに行ってやるからよ」
そういうと、お前はその丸くて大きな目をさらに開いて、きらきらと輝かせた。
「嘘じゃないよね」
「嘘なんてつかない」
「うれしい、ありがとう」
「これからも沢山あそぼーぜ」
「うん」

これからも、君と

4/4/2025, 3:29:19 AM