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麦わら帽子
あるゲームの夢小説です(ネタバレを含む可能性があります)


爽やかな風
時折太陽に照らされ煌めく地面
揺れるたび様々な色に変化する海

この時期は特にそれらが生き生きとしだす
だが、昔はここら一帯観光客で賑わっていたらしいが、辺境となって日が経つ今、自分一人しかいない
見てほしいと思う反面、ひとり占めしていることに優越感を覚えてしまう

そんな思考も波音でかき消される
更には足元に水飛沫がかかりひんやりと気持ちいい
ここに来れば全ての感覚を海に取られてしまう
だが、それが良かった


そのまましばらく過ごすつもりでゆっくりしていると、それらではない音が混じった
音の方を見てみると岩陰から麦わら帽子らしきもの、数秒後にはちらりと、こちらを伺うように顔だけが見えた
距離はあるが、互いが見つめ合ったと理解できる程度であった

少女は、最初こそ怪訝な表情をしていたが、なぜか目線が合うと同時にその表情を変えた
そして、花が開くようなにこやかな笑みを浮かべこちらに歩いてくる
時々風で飛ばないように被った麦わら帽子を抑える、その動作すら何故か心を揺さぶるに値するものだった。
確かに、類稀なる美少女であったが、それ以上の何かがあるような気がした

呆気に取られていると、遊ぼう!と元気よく身振り手振りで伝えてきた
することもなかったし、きっとこの少女もこんな誰もいない辺境に来て退屈だったんだろうと思い頷いた

その後は数時間ほど思いっきり、過去一番といっていいほど少女と遊んだ
遊具や、遮るものも無い砂浜は遊ぶには十分すぎるほどだった
また、見た目よりも上手な少女にリードされながら海で泳いだりと、
本当に子供のように遊んだ


太陽がほんのり赤く、それに伴うように海も赤くなってきた頃
そろそろ帰らないと行けないと告げた
少女も空を見て頷く
少し俯き、名残惜しそうにしていた自分を見かねてか、近寄ってくる
そして、全てを受け入れるかのような抱擁をする
体を離し、少女を見た
少女は、ただ静かに微笑んでいた

楽しかったことや感謝なんかを告げ、本当に帰路に着く

(また、あそぼうね)

そう、少女の口が動いていた

8/11/2023, 3:05:30 PM