「君はいつも、何を我慢しているの?」
彼に言われた言葉。私は何も言えなかった。
「おねえちゃんに似て、優秀な子ね。」
母は私の頭を撫でながら、優しく微笑んでくれた。
「真面目で素晴らしい。」
父は私を、大きな声で称賛した。でもな、何かな。何かが痛いんだ。なんでなんだろう。
「ねぇ、そこで何しているの?」
自宅の高級マンションの屋上。高級が付くのが納得するほどに、綺麗な景色がそこにあった。そんな景色を眺めていると、突然男の子の声がした。私は振り返ると、無愛想に私を見つめる彼が居た。彼は確か、同級生の。私は笑顔で、言う。
「今から、死ぬの。」
彼は、だろうね、と呟いた。
「何で、君みたいな優等生が自殺なんかするの?」
「疲れたんだよ。優等生を演じるのも、笑顔を作るのも。何もかも。君には分からないよね。」
分かってたまるか。彼みたいに、何もしていないような奴に。優等生は劣ってはいけないの。劣ったら、落胆されるの。私はそれが怖い。
「分からないよ。でも、君が頑張ってきた事は分かる。」
彼は澄んだ目をしていた。まるで全てを肯定するような瞳だった。
「ねぇ、君はいつも、何を我慢しているの?」
「そんなの知って、君に何か得でもあるの?」
「ないよ。でも、君の苦しみを半分個に出来る。」
なにそれ。つい笑ってしまいそうになる。コイツ、意外と良い奴だったんだ。
「頑張りすぎてたんだね。もう大丈夫だよ。」
私は、彼に言われて初めて気づいた。私は泣いていた。
その日、私は声が枯れるまで泣いた。彼はそんな私の傍に居てくれた。泣き終わった時、少し恥ずかしかったけど。それでも、何かが軽くなった気がした。
10/21/2024, 2:26:00 PM