300字小説
賛美歌の流れるなかで
祖母がこの惑星に来るとき、移民船団の中の数隻が致命的な事故を起こした。
他の船に乗り換えたが、祖母の友人を含む、船一隻分の人々はどうしても置いていかざるえなかった。
『我々はこの場所で留まる』
祖母は断腸の思いで船に別れを告げたという。
そんな話を思い出しながら、遭難船に乗り込む。俺の仕事はトレジャーハンター。『墓荒らし』と揶揄する者もいるが。
居住区に乗り込み、物色する。とある家では、住人全ての遺体がベッドで横になっていた。
バッテリーで電源を復活させる。途端に音楽が流れ出す。
「驚かせるなよ……」
美しい女性の声で朗々と響く賛美歌。この歌を祖母が感慨深げに聞いていたことを思い出し、俺はそっと祈りを捧げた。
お題「この場所で」
2/11/2024, 11:35:28 AM