さよならは言わないで
あの人と過ごした時間は、私の人生において序章の一節に過ぎないだろう。
好きとも嫌いともつかない。
ただ、離れることなど到底考えられなかった。
あの頃の私にとって、確かに世界そのものだったのだ。
あの人にとってはどうだっただろうか。
さよならの代わりに告げられた、たった3文字の言葉が、かつての世界を辛うじて繋ぎとめてしまっている。
今でも心の片隅で再びの邂逅を待ちわびている。
あの人にとってはどうだろうか。
幼い時分の人間関係なんて、ましてや掛けた言葉なんて、きっとすっかり忘れて今を生きているだろう。
だとしたらまるで呪いだ、と静かに溜息を零した。
12/4/2024, 3:08:41 AM