「わー…」
街を歩いていた時、君が突然とあるお店のショーウィンドウに張り付いて声を上げた。
美しい男女がくるりくるりと踊る映像が流れている。社交ダンスか。俺らもダンスするけどこういうのはやったことないな、当たり前だけど。きれーだなーうめーなー大変そうだなーとは思うけど、、
「おい、行こうぜ」
「…うん」
君は歩きながらもちらちら後ろ髪引かれるように振り返っている。
よっぽど気に入ったんだな。
君は男らしいことも大好きだけど、きれいなもの可愛いものも大好きだってこと知っている。
誰からも咎められない愛に憧れる気持ちも。
それだけは、俺、与えてやることはできない…
部屋に戻っていつもの通りに手を洗って着替えて部屋呑みの缶ビールを開けてYouTubeでもつけて。
君はさっきのことなんて忘れたみたいにいつものどうりで、ソファに腰掛けてなに見るのーなんて言っている。
「んー…これ」
それはクラシックミュージック。どっかの楽団の。俺も曲とか全然わかんないけどワルツ、で検索した。
そして俺は缶ビールをテーブルに置いて、キョトンしたままの君の前で胸に手を当てて手を差し出した。
「Shall we dance?」
「ん? なに?」
…君は英会話はほとんどできないんだった。
「踊りませんか? だよ。見よう見まねでやってみよ」
君はまだ一口しか飲んでいないのに顔を赤くして、なんだよーとかバカじゃねーのとか言いながらも俺の手を取って立ち上がった。
〝普通の恋〟はあげられないけど、こうしてたまには踊りましょう。
君と俺とのダンスはこれからも続くんだから…
▼踊りませんか?
10/5/2023, 8:51:32 AM