【44,お題:喪失感】
少し湿った匂いのする昼下がり
俺と✕✕✕ は、共に街を歩いていた
「いやぁ、お前来てくれると思わなかったからさぁ」
「この後どーする?映画でも行かね?俺、観たいのがあって...」
ゴロ...ビシャァァッン!!!!
「うおっ!雷!?」
耳をつんざくような雷鳴の後数秒の間をおいて
バケツの水をひっくり返したかのようなどしゃ降りが、物凄い勢いで降りだした
ザバアアアアアアア!!!!!
「やっば...どっか雨宿りしねぇと、行くぞ✕✕✕」
そう言って振り返った
---いない。
「✕✕✕?」
なんで?...俺、アイツと...
バリバリバリバリィィッッ!!!ゴロロロゴロゴロ...
雷の音が、真っ黒の世界に鳴り響いた。
「あれぇ...?おれ、」
全身びしょ濡れなのに、なぜか目元だけやけに熱い
「おれ、アイツと......?」
アイツは、どこに?
アイツは...........
ギキイイイイイイィィィィィッッッッッッッッ!!!!
『光吉っ!』
「あ“...あ“ぁッ」
嘘だ、ウソジャナイ。だってアイツは生きて、ホントウニ?今日も一緒に...
一緒に.........イナカッタ
やけに人の少ない町の中
胸の辺りに、穴が空いたようだった
痛いほどの喪失感に蝕まれたまま
俺はその場から動くことができなかった。
9/10/2023, 11:31:01 AM