【 泥棒サンタ 】
サンタさんへ。
今年はカーテン、開けてるよ。
お空は真っ暗とは言わずとも、薄暗くて、でも完全に暗い訳じゃなくて。
お空で少し灯りが灯って居るみたい。
僕のお部屋からお外が見えるってことは、サンタさんも何処の子か分からない、この子のお家は〜だなんて迷う事は無いだろう?
でもきっと、今年もサンタさんは来ない。
今年はクリスマスを祝う事も出来ない。
ごめんなさい、貴方の誕生日をもうすぐ迎えると知りながら、僕はあの家を出ました。
サンタさんだなんて、望んでも望み切れない。
今年の最後の最後に限って、良い子じゃ居られなかった。
僕は罪深き人類で在ります。
それはもう、欲という止め処も無い根が張り巡らされ、その根から養分を吸い取る僕という二足歩行で歩む人間が存在したからなのです。
ごめんなさい。
僕があの家を出たばかりに、あの家の最後のクリスマスを奪って仕舞ったのです。
僕がどう足掻いたとしても、必ずサンタさんは訪れる事は無い。
判って居たのです。
全て、解って居た心算なのです。
こうなるしか無かったのだと。
自分に何度も言い聞かせました。
分かって居たのだと、何度も何度も自分に麻酔を打ち付けて。
何本もの麻酔と麻薬。
気付いた時既に、遅し。
僕の体には数え切れない程の穴が空いて仕舞って居た。
僕はもう、狂ってお終いなのでしょう。
嗚呼、欲が溢れて止まりませぬ。
どうして雲の上に住まわれる聖夜の夜に輝く高貴な方々は、僕の元には一対のサンタさんすら姿を寄越さないのでしょう。
僕は、一度の罪を犯した迄なのです。
それまでの一年は、泥水を見つけ出しては、それは喜んで啜る人生に有りました。
僕はただ、一家の最後のクリスマスを奪っただけに過ぎないのです。
それなのに、どうしてこの様な仕打ちが出来るのでしょう。
高が知れる、所詮サンタと成る者も醜き人間に過ぎぬのだと、幼いながらの僕はそう、思ったのです。
時に人とは、嫌に等しく成り下がるものなのですね。
嗚呼、今宵は星々が散らばって、聖夜、と言い表すだけでは大変みすぼらしく感じて仕舞う程の満天の星空、夜空に御座います。
ですが、生憎、本日のお月はお見えにならない御様子で。
けれど、明日にはきっと麗しき月がお見えに成るかと存じます。
貴方にも見えていらっしゃいますか。
明日の月は綺麗なのでしょうね。
そう、一言の文を寄せて。
12/23/2023, 4:14:21 PM