「貴方は何のためにこんな事を?」
何のためか?それはねーーー。
『ねぇ、死にたくない?』
俺が尋ねると、誰もが頷いた。だから俺は、そんな彼らを終わりへと導いてあげる。俺は今日も、0時の鐘が鳴ると共に、眠れない人達を眠らせに行く。
マンションの十二階。そこの一室のベランダに、一人の男の子が居た。俺は彼に話しかけた。
『ねぇ、死にたいの?』
彼は驚いたようだ。なんせ俺は浮いているのだから。
「もしかして、噂の悪魔さんですか?」
『そうだよ。俺って有名人?』
「ええ。病んでる子を次々と死へと送っているとか。」
彼は嫌味ったらしく言った。何でだろう。俺は彼が苦手かもしれない。
「それで、俺に何のようですか?」
『分かってるでしょ。君を死へと誘いに来たって。』
「その行為に何のメリットが?貴方は何のためにこんな事を?」
この言葉で確信した。俺は彼が嫌いだ。全てを見透かされる気がして、気持ち悪くなる。
「貴方は何を欲しているんですか?」
『友達。俺は友達が欲しい。』
俺がまだ生きていた頃。俺は生まれつきの病で、外に出る事がなかった。窓から見える、走り回る子達に憧れた。そして、俺は神様を憎んだ。俺は何も悪くないのに、何で俺がこんな目に合うんだ。俺は自分が死ぬ時まで、ずっと恨み言を言い続けた。きっとだからだ。死んだ後に悪魔になったのは。死のうとしている子を死へと誘うのは、只一緒に走りたかっただけなんだ。
「その子達は、友達になってくれましたか?」
『皆、成仏してしまうから。友達にはなれない。』
「では、俺が友達になります。」
『嘘だ。君もどうせ、俺を置いていく。』
「大丈夫です。神への恨み言には自信があるので。」
『どういう事?』
「俺、もうすぐ死ぬんです。不治の病で。」
『じゃあ、俺を置いてかない?ずっと友達で居てくれる?』
「はい。俺はずっと貴方の友達です。」
彼は約束してくれた。ずっと友達で居ると。俺は泣いてしまった。そんな俺を彼は、優しく笑ってくれた。
彼が死ぬまで暇なので、俺は今まで通り死にたい人に会いに行く。でも、今度はちゃんと話を聞く事にした。少しでも、幸せになって欲しいから。0時を告げる鐘が鳴る。
『寝てない悪い子、だ~れだ。』
8/5/2024, 4:16:27 PM